私は、文字も読めないころから、「良寛さ」の逸話を聞かされて育ちました。不思議な、そのお方への思いは、和歌に触れ、詩を読み、書などを見ることにより、私の心のなかで変化してゆきました。

 並々ならぬそのお方は、涙があり、憤りがあり、何よりも父恋し、母恋しの情を隠さなかったのです。人の生きよう、ありようを良寛さまに見い出して楽しいものになりました。

 そうですよ、そうですよね、良寛さま。あなた様もまた、心踊らせてこの春の訪れを待っておられたのですよね。思わず呼びかけてみたいような。

  あわ雪の中に顕ちたる三千大千世界

   またその中に沫雪ぞ降る

  

今年もまた、この越の里に

“すみれ、雪割草、堅香児 “可憐な花々が咲きました。